第560章 お前の運は尽きた

上山賢はそう唆されると、胸の内にあった僅かな懸念など、瞬く間に跡形もなく消え去った。

彼はサングラスをかけ直して車を降りると、コートの襟を合わせ、足早に喫茶店へと入っていった。

その背後には、漆黒の霧のような塊がぴったりと張り付いている。

空はまるで濃墨を流したかのように暗かった。

「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」

上山賢が店内に足を踏み入れた瞬間、店員が礼儀正しく歩み寄ってきた。

その表情は自然で、少しの違和感も見当たらない。

上山賢は店内をぐるりと見回し、やがてその視線を羽田律に固定した。

彼は軽く手を振る。

「いや、結構だ。連れを探しに来ただけだから...

ログインして続きを読む