第3章

ひたすら仕事に没頭した。血漿の色を何度も何度も調合し、忙しさで頭を麻痺させようと必死だった。

だが、深夜の静寂の中、あの言葉が不意に現れては私を苛むのだ。

アパートに帰宅したのは午後十一時。シャワーを浴びてベッドに横になり、眠れ、忘れろ、と自分に言い聞かせた。

しかし、忘れようとすればするほど、胸が締め付けられるように痛んだ。

午前三時。インスタグラムの通知を告げる振動が、ナイフのように混沌とした思考を断ち切り、私を覚醒させた。

眠気眼でスマホに手を伸ばす。画面が光った瞬間、トレンドの見出しが雷のように目に飛び込んできた。

#悟梨乃 #神カップル #尊い

は?

一瞬で眠気が吹き飛んだ。震える指でそのトピックをタップすると、写真の洪水が流れ込んできた。国際的なスーパーモデルである梨乃と悟の仕事中のショット。カメラの前で見せる二人の完璧な空気感、彼女のはにかむような笑顔、彼の真剣な眼差し……

「くそっ」思わず悪態が口をついて出た。

一枚目。スタジオで、純白のドレスを纏った梨乃と、片膝をついてカメラアングルを調整する悟。二人の距離は、息がかかるほど近い。

二枚目。休憩中、カメラのモニターを覗き込みながら、梨乃は悟の肩に寄りかかっている。彼女の手は、ごく自然に彼の胸に置かれていた。

三枚目。打ち上げのディナーで、グラスを掲げた二人は、笑顔で見つめ合っている。交わされる視線には、言葉にできない親密さが漂っていた。

コメント欄は、とんでもないことになっていた。

「きゃあああ!神カップル、ついに公認!?」

「悟の眼差しが優しすぎる!あれは本物の愛がないと出せない表情だよ!」

「才能と美貌、完璧な組み合わせ!今すぐ結婚して!」

「完璧な組み合わせ……」

乾いた笑いが漏れた。そう、天才写真家と完璧なスーパーモデル。それこそが、本当にお似合いの二人。じゃあ、私は? 私は、一体なんなんだろう。

スクロールを続けるたび、心に棘が刺さるようだった。ファンが昨日の梨乃のインタビューを掘り起こしていた。私は最小の音量にして、再生ボタンを押した。

「悟さんとの撮影はいかがでしたか?」レポーターが尋ねる。

梨乃は恥ずかしそうに俯き、それから教科書に載っているかのような完璧な笑顔でカメラを見上げた。「彼はいつも、私の最も美しい角度を捉えてくれるんです。それは……運命なのかな、って思います」

「プライベートでも親しいという噂がありますが?」

「彼は……とても特別な人です」彼女は頬を染めた。「彼と一緒にいると、自分が輝けるような気がするんです。人には、出会うべきタイミングというものがあるのかもしれませんね」

心臓を容赦なく鷲掴みにされたような感覚だった。

この人が、今、彼の隣にいる女性? あの完璧な顔立ち、上品な話し方、スーパーモデルのスタイル……彼女を見て、それから鏡に映る傷だらけの自分を思った。

さっきまで、彼に綺麗だと言われたことを思い出していたのに、今、目の当たりにしているのは、本物の女神といる彼の姿……なんて惨めなんだろう、私は。

コメントをスクロールし続ける。一つ一つが針のように心を刺す。

「梨乃はリアル女神!悟は見る目があるね!」

「天才写真家と完璧なスーパーモデル、これぞまさにお似合いのカップル!」

「梨乃のインタビュー見た?彼女が言ってた『とある天才写真家』って、絶対悟のことだよね!」

「プロポーズの時期を予想!ブライズメイドになる準備はできてる!」

中には「関係性の時系列」と題した動画を作成し、最初のコラボから現在までの「匂わせ」を分析しているブロガーまでいた。

「最初の撮影で、悟が異例にも自ら梨乃のポーズを直した」

「休憩中、二人は30分以上も二人きりで話し込んでいた」

「梨乃のインスタグラムのストーリーに、悟と同じコーヒーカップが写り込んでいた」

「昨日のディナーで、悟が彼女の椅子を引いてあげていた」

数百万人のフォロワーを持つ、ある大物インフルエンサーの投稿が目に留まった。

「ベテランのファッション業界ウォッチャーとして断言する。悟クラスの写真家が仕事以外でモデルと交流することは滅多にない。だが、梨乃は明らかに例外だ。あの視線の交わし方、自然な親密さ――これは単なるプロフェッショナルな関係ではない。三ヶ月以内に交際発表、半年以内に婚約と予測する!」

三万の「いいね」と、五千件の祝福コメント。

こらえようとしても、涙がこぼれ落ちた。

彼女の完璧な顔を見て、それから自分を見る……第一章の雑誌に載っていた「少女」は、きっと彼女のことなんだ。彼が言っていた言葉、あの「本当の美しさ」についての洞察、すべては彼女がいたからこそ生まれたものだった。

なんて馬鹿げた思い上がりだったんだろう。

安アパートに住む、傷だらけの少女が、国際的に有名な写真家に覚えていてもらえるだなんて。

夜が明け始めていた。安物のカーテンから差し込む日差しは、泣きたくなるほど眩しい。

深呼吸をして、悟のインスタグラムのプロフィールを開いた。フォローボタンが、青く、目に焼き付くようにそこにあった。

「フォロー解除」の上で、指が長いことさまよった。

これが何を意味するのか? それは、私たちを繋ぐ最後の糸を断ち切ること。私たちが永遠に違う世界の住人だと認めること。

でも、そうしなければならなかった。

ツイッターを開いた。フォロー解除。

フェイスブック。フォロー解除。

インスタグラム。フォロー解除。

クリックするたびに、心臓が切り裂かれるようだった。

残るはリンクトインだけになった。手を止めた。

「これだけは残しておこう」と自分に言い聞かせた。「しょせん、ただのプロフェッショナルな交流サイトなんだから」

それが、自分に許した最後のプライドだった。私たちは、まだ同僚でいられる。ただの、同僚。

バスルームに行き、電気をつけた。鏡の中の女は、実にみすぼらしかった。泣き腫らした目、涙の跡で一層際立つ傷痕。

顔の傷をなぞりながら、梨乃の完璧な顔立ちを思い浮かべた。

「絵里、目を覚ましなさい」鏡の中の自分に言った。

「昔も今も、階下の貧しい少女でしかないの」

「そして彼は……あの完璧な世界に属する人。梨乃のような女神といるべき人なのよ」

「この恋は、ここで終わりにするの」

バスルームから背を向け、パソコンを開き、悟に関する最後のフォルダを削除し始めた。そこには、彼の全作品へのリンクが入っていた。私が数えきれないほど見返した、一つ一つの作品への。

削除ボタンを押した瞬間、心にぽっかりと穴が空いた気がした。

それから仕事用のメールを開き、新しい特殊メイクの仕事を探し始めた。映画制作会社、広告代理店、インディーズのスタジオ……私を忙しくさせてくれる仕事なら、何でもよかった。

ついには、エージェントの歩美にメッセージまで送った。「何か仕事の機会があったら、すぐに連絡をください。忙しくしていなきゃいけないんです」

送信ボタンを押した後、椅子に崩れ落ちた。

すべてのフォローを削除し、仕事探しのメールを送った。私は自分に言い聞かせた。「今日から、もっと現実的に生きるんだ」

しかし、再びベッドに横になり、頭から毛布を被ると、心は抗いようもなくあの記憶へと引き戻されていく……

「この角度から見ると、傷が天使の翼の影みたいだ」

「絵里は誰よりも、もっと大きな世界にふさわしい」

無理やり目を閉じた。少し眠れば、この痛みも和らぐかもしれない。忙しく仕事をしていれば、馬鹿なことを考える暇もなくなるかもしれない。

もしかしたら、もしかしたら、本当に忘れることができるかもしれない。

外の空は、すっかり明るくなっていた。私は疲労と失意の中で、うとうとと眠りに落ちた。

たとえ心がまだ痛んでも、たとえどんなに速く削除ボタンをクリックしても、心の奥底に埋もれた美しい記憶を消し去ることはできなかった。

でも、忘れようと努力しなければならなかった。

なぜなら、夢の中だけで終わる運命の夢もあるのだから。

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