第5章

あの黒い名刺は、三日間ずっと、ナイトテーブルの上に静かに置かれていた。

毎晩、私はそれを長いこと見つめ、その番号に電話をかけたら何が起こるだろうかと想像を巡らせた。けれど、指がスマートフォンに触れるたび、恐怖心が脳を支配する。私は今も顔に傷のある少女のままで、彼は世界的に有名な写真家なのだ。

四日目の朝、私のスマートフォンが鳴った。

「番号非通知」。私はためらいながらも通話ボタンを押した。

「絵里? 俺だよ、悟だ」。その聞き慣れた声に、心臓がどきりと跳ねた。

「ど、どうして私の番号を?」私は緊張してどもってしまった。

「歩美に教えてもらったんだ。迷惑じゃなかったかな」。彼...

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