第103章

小林凌輝の喉仏が、ごくり、ごくりと激しく上下した。全身の力を振り絞って、乾いて痛む喉の奥から、息混じりの言葉を押し出す。

「……ごめん」

過去へ。あの数年、雪奈に向けてきた冷たさと、傷つけたすべてへ。

雪奈は彼の目を見つめた。心臓が、ひゅっと一拍だけ抜け落ちる。

次の瞬間、酸っぱい熱が一気に目の奥へせり上がり、鼻の奥がつんと痛んだ。耳元では、自分の鼓動が乱暴に鳴り響いている気さえする。

手首を掴んでいる彼の冷たい手が、かすかに震えているのも分かった。

泣けない。――まして、彼の前で弱さなんて見せられない。

遅すぎる「ごめん」の一言で、全部が帳消しになると思わせてたまるものか。

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