第107章

雪奈はほっと息をつき、報告書をさっと折り畳んでバッグへ滑り込ませる。渡り廊下を抜け、外来診療棟へ向かい、そのまま帰るつもりだった。

リハビリセンターの前を通りかかったとき――なぜだか、足が止まった。

ガラス扉の向こう、でかでかと印字された文字の奥を覗き込む。次の瞬間、器具がかすかに触れ合う音と、リハビリ療法士の短い指示が耳に届いた。迷いが胸の内で揺れて、雪奈はそっと扉を押す。

中は広く、光が満ちている。視線を巡らせ、すぐに一点で止まった。

平行棒に両手を掛け、ゆっくりと身体を運ぶ背の高い男。

小林凌輝だった。

入口に背を向け、濃いグレーのジャージ姿。背中の布地は汗でべったり濡れ、...

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