第111章

剣呑な空気を肌で感じ取りながら、山本莉乃の視線は山本祐翔に落ちた。隠しもしない恋慕と不安。けれど、その目が山本武宏へ向いた瞬間、表情は一転して「聞き分けのいい娘」のそれに変わる。

「お父さん、もうお兄ちゃんのこと怒らないで。まず、お茶……飲んで?」

莉乃は湯気の立つ茶碗をそっと書方の上に置き、声を柔らかく落とした。それから祐翔へ向き直る。媚びるようで、痛ましげで、いかにも「心配している妹」みたいな目。

「お兄ちゃんも、お父さんに逆らわないで。お父さんだってお兄ちゃんのため、山本家のために言ってるんだよ。雪奈のこと、今どれだけ評判悪いか分かってる? トラブルだって散々起こして……」

言...

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