第112章

山本祐翔はもう二人を見なかった。視線を逸らし、声に濃い疲れと諦めを滲ませる。

「この家には、とっくにうんざりしてる。好きに芝居でも何でもやればいい。俺のことは――今日から先、お前らにとやかく言われる筋合いはない」

言い切るや否や、踵を返して出て行こうとする。

「待て!」

山本武宏が怒鳴り、荒々しく山本莉乃を押しのけると、書斎の外へ向けて吼えた。

「来い!」

次の瞬間、扉がばっと開く。黒いスーツに身を包んだ屈強なボディーガードが二人、入口に現れ、祐翔の進路を塞いだ。

山本家の古参だ。伏し目がちで表情はない。だが、その体躯は分厚い壁のように出口を閉ざしている。

祐翔の足が止まる。...

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