第114章

それは、聞き慣れない――どこか掠れた男の声だった。

「同じ市内の特急便です」

こんな時間に?

雪奈の胸を、かすかな警戒心がよぎる。

けれど、急ぎのサンプルか重要書類かもしれない。そう思い直し、彼女は答えた。

「分かりました。少し待っててください。今、下ります」

コートの前をきゅっとかき合わせ、雪奈は階下へ向かった。

ロビーは明るく照らされている。だが警備員は交代したばかりなのか、新しい担当はトイレにでも行ったのか、持ち場にいない。

入口のところに、どこか有名な宅配会社の制服を着た男が立っていた。キャップにマスク。手には、A3ほどの平たい紙の書類袋。

「白井雪奈さん?」

マ...

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