第117章

雪奈は横目でそれを捉えたが、深く考える暇もなかった。ほとんど反射で、すっと手を伸ばし、受け止めようとする。

それは、かつて小林凌輝が事故で昏睡から目覚めたばかりの頃、彼に食事を食べさせるたび何度も何度も繰り返した動作だった。今では、完全に身体が覚えてしまっている。

指先が彼の袖に触れそうになった、その瞬間。

雪奈ははっと我に返り、手が空中で固まった。次いで、ひどく不自然に、そっと引っ込める。

代わりに傍らのコップを手に取り、俯いて水を飲んだ。さっきの動揺と、踏み越えかけた境界線を隠すために。

小林凌輝の動きも、一瞬止まる。

慌てて引っ込められた彼女の手。伏せた睫毛が小さく震える瞼...

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