第129章

それは昼間、庭のゴミ溜めで拾ったものだった。彼女は誰にも見られないように、こっそり隠しておいた。

扉の前まで行き、針金を鍵穴に差し込む。息を殺し、慎重に探るように動かす。

カチリ、と小さな音。

――開いた。

鼓動が跳ね上がる。雪奈は呼吸を止め、そっと扉を引いて頭だけ廊下へ出した。幸い、いま廊下に人影はない。

数秒待ってから、忍び足で階段口へ。降りようとした、その瞬間。

下から、ハイヒールが床を叩く乾いた音が近づいてきた。

背中に薄い汗がにじむ。雪奈はすぐに数歩下がり、影の中へ身を引いた。息を詰め、壁に身体を沿わせる。

階段下の薄暗い明かりの中、ベージュのトレンチコートを羽織っ...

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