第140章

翌朝早く。山本父は出かける支度を整え、リビングを横切ったところで、ソファの前でふと足を止めた。

二階の廊下の奥。固く閉ざされた扉を一度だけ見やり、数秒、黙る。それから、キッチンから出てきた下村さんを呼び止めた。

「祐翔はどうだ」

下村さんは向き直り、手を揃えて答える。

「若様は昨夜、熱を出されまして。夜中になってようやく下がり、明け方にお粥を半分ほど召し上がって、またお休みになりました」

山本父は眉根を寄せたまま、何も言わない。

鞄を手に取り、玄関で靴を履き替える。ドアノブに手をかけたところで、また止まった。何かを量るように数秒、間を置いてから振り返る。

「俺のかかりつけを呼べ...

ログインして続きを読む