第166章

電話の向こうが数秒、しんと静まり返った。やがて雪奈の声が落ち着いて響く。

「いいわ。引き受ける。ただし、あなたが渡す情報は最初から最後まで、欠けも嘘もないこと。もし隠し事があると分かったら――取引は白紙よ」

「分かった」

白井桃奈はそれだけ言うと通話を切り、履歴を削除した。予備のスマホをバッグのいちばん奥、仕切りのさらに深いところへ押し込む。

それから服の乱れをさっと整え、トイレの扉を押し開けた。何事もなかった顔で、廊下へ出ていく。

……

社長室。

小林凌輝はデスクの向こうに腰掛け、指先でペンをくるりと回していた。視線の先には、開かれたままのファイル。

中身は、つい先ほど届い...

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