第167章

彼女は俯き、テーブルの上のファイルに視線を落とした。瞳から温度が消え、氷みたいに冷たくなる。

――もう、この人は私を疑い始めてる。なら、手を早めるしかない。

夜更け。山本家の別荘は、しんと静まり返っていた。

山本莉乃はベッドに横たわったまま、目を開けて天井を見つめ続ける。じっと一時間。廊下の気配が完全に途切れたのを確かめてから、そっと身を起こした。

灯りはつけない。窓から差し込む月明かりだけを頼りにドアまで行き、耳を当てて数秒、息を殺す。外は不気味なほど静かだった。

ゆっくりとドアノブを回し、隙間を作って半身だけ廊下へ。――誰もいない。

莉乃は裸足のまま、音を立てずに廊下を進み、...

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