第170章

「師匠がいちばん嫌がるのは、建築の図面が犯罪者の手に渡ることなんです」

雪奈は彼の視線を受け止め、静かなまま、しかし一歩も引かない声で言い切った。

「私が直接止めに行きます。それに梅野昭人はあなたの顔を知ってる。私は影に紛れて動けるから、身元は割れません」

小林凌輝は数秒、黙った。胸の内で危険と見返りを秤にかけるように考え、やがて折れるように息を吐く。

「行っていい。ただし指揮には従え。少しでもおかしいと思ったら、すぐに引き返せ」

雪奈は迷いなくうなずいた。

「分かった」

それでようやく小林凌輝も頷き返し、スマホを取り出して明日の段取りに取りかかる。雪奈が伏せたまつげの奥に、刹...

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