第180章

雪奈は見つめたまま、口を開かなかった。海風が強すぎるせいか、目の縁がうっすら赤い。

彼女はただ左手を差し出す。指を少し開き、かすかに震わせながら。

小林凌輝が視線を落とし、その指に指輪をゆっくり通した。薬指へ。

ぴたり、と収まる。最初から彼女のために作られたサイズだった。

彼が立ち上がる。

二人は潮風の中で向かい合い、それでも何も言わない。

やがて雪奈は俯き、月明かりを受けてほのかに光る指輪を見つめ、そっと触れた。

指先にはひんやりした感触。けれど胸の奥には、じんわりと温かいものが流れ込んでくる。

翌日、パリの小さな教会で。

二人は、もう一度だけ結婚式を挙げた。

華やかな...

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