第28章

声は、だんだんと遠ざかっていった。

雪奈はその場に立ち尽くしたまま、驚いた様子も見せない。ただ、瞳の奥をかすめたのは、ほとんど形にならない薄い冷笑だけ。

くるりと踵を返し、彼女は再び、グラスが触れ合う音の飛び交うパーティー会場へと歩き出した。

オークションは続く。次の出品物が運び込まれた。

今は亡き名高い画家の作品『紫の鳶』。

それほど大きな作品ではない。だが、創作の最盛期に手がけた一枚らしく、筆致は伸びやかで、墨の冴えも際立ち、絵そのものが息づいているようだった。

競りが始まると、価格は着実に積み上がっていった。

白井桃奈はこの絵にも執着しているらしく、またしても札を上げる。

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