第51章

しかし次の瞬間、小林凌輝は自分の傷など意に介さず、雪奈をぐっと抱き締めた。骨が軋みそうなほどの力で。

身体が小刻みに震えている。掠れた声が彼女の耳朶を撫で、低く呟いた。

「……ごめん。遅くなった」

雪奈は硬直したまま抱き込まれ、鼻先には血の匂いと土埃が混じった彼の気配がまとわりつく。耳元では、早鐘みたいな鼓動と、震える謝罪が途切れ途切れに響いていた。

助かったことへの安堵の裏に潜む恐怖。連日の疲れ。言いようのない悔しさ。いくつもの感情が絡まり合い、心臓を分厚く包む。考えることも、突き放すこともできないまま、雪奈はただ、息を呑んだ。

少し離れた場所で山本祐翔が、その光景を見つめていた...

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