第52章

「入って」

吉田辰哉がドアを押して入ってきた。手には資料の束。雪奈の視線に気づくと、気まずそうに頭をかき、奥へ進む。

その「言いたいのに言い出せない」顔を見て、雪奈はすぐ察した。

「……また、あの人に?」

吉田辰哉は否定も肯定もせず、小さくうなずく。唇を結んでから、ぽつりと言った。

「『ミラージュ』の件、組みたいって。メリットとデメリットも説明されて……正直、言ってることは筋が通ってると思いました」

雪奈を見上げる目が弱くなる。けれど、すぐに言い切るように続けた。

「でも、snowさん。安心してください。俺は全部、snowさんの判断に従います。協業したくないなら、今後は彼の秘書...

ログインして続きを読む