第60章

小林凌輝が目を覚ましたとき、いちばん最初に視界に入ったのは、彼女だった。

窓の外の夕陽が、雪奈の横顔にやわらかな熱を落としている。けれどその光は同時に、瞳の奥に沈む疲れと不安まで、くっきり浮かび上がらせていた。

小林凌輝は唇を薄く結ぶ。せっかくの静けさを壊したくない――そう思ったのに、喉の奥がむず痒くて、堪えきれず小さく咳を漏らした。

「……起きたの?」

雪奈はびくりと我に返り、すぐに立ち上がる。

「具合は? 医者を呼んでくる」

「いい」

小林凌輝の声はまだ掠れていた。小さく首を振った拍子に腕の傷が引きつれ、眉がほんのわずかに寄る。だがそれも一瞬で消える。

病室は静まり返って...

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