第63章

白井桃奈は、まだ胸の奥に残る冷えを振り払うように、そっと腕を持ち上げて確かめた。

視界に入った肌は白く、なめらかで――傷跡らしき影すらない。

さっき小林凌輝に問いかけられた場面を思い出すだけで、心臓が制御を失って暴れだす。喉元まで跳ね上がってきそうなほどに。

白井桃奈は視線を落とし、瞳の底に陰が差した。

今日、慌てて出てきたせいだ。あれを忘れるなんて。

小林凌輝の長年の罪悪感と特別扱いを引き出すための「偽装」。そして命の恩人である証として彼女が利用してきた、あの傷跡が――本当に薄れて、ほとんど見えなくなっている。

桃奈は唇を噛む。

本来、鉄の鉤でえぐられて血肉がめくれたような傷...

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