第82章

窓側の後方席で、小林凌輝は狭い通路と幾重にも重なるシートの背を視線で抜け、前方の見慣れた背中を捉えていた。

機内の照明は睡眠向けに落とされ、薄闇が広がっている。点いているのは数えるほどの読書灯だけで、小さなあたたかい光の輪がところどころに浮かんでいた。

雪奈は最初、少し仕事を片づけるつもりだった。けれど静かでぬくもりのある空気があまりにも眠りに向いていて、数分もしないうちに、胸の奥からじわりと眠気が押し寄せる。

気合いで持ちこたえようとした。だが身体の疲れは正直で、頭がふっと傾き、柔らかなヘッドレストに預けられる。呼吸が次第に整い、長く、穏やかになっていき――

眠ってしまった。

山...

ログインして続きを読む