第83章

皆が示し合わせたみたいに振り返ると、いつの間にか小林凌輝が彼らの背後に立っていた。どうやら同じ便で到着していたらしい。

小林凌輝は、雪奈の「信じられない」という視線を都合よく見なかったことにして、自然に歩み寄る。

「俺もちょうどパリをぶらつこうと思ってた。よかったら一緒にどう? ここはそれなりに慣れてる」

言い終わるより早く、雪奈は反射で切り捨てた。笑っているのに目が笑っていない。

「小林社長はお忙しいでしょう。私なんかにお時間を割かせるわけには」

小林凌輝は表情ひとつ変えない。

「たまたま時間がある」

その場の空気が、すっと冷えて静まり返った。雪奈は眉を寄せる。今さら何のつも...

ログインして続きを読む