第84章

男は目を伏せ、刷り上がったばかりのツーショットを見つめた。

それから、壊れものでも扱うみたいに小さな写真を財布の内ポケットへそっと差し込む。

会計を済ませて雪奈に追いつくと、彼の表情はいつも通りだった。まるで、何事もなかったかのように。

明らかに機嫌がよさそうな様子に、雪奈は結局、我慢できずに訊いた。

「さっき、カメラマンと何話してたの? ずいぶん長かったけど」

小林凌輝は顔色ひとつ変えない。

「このへんに、いいレストランがないか聞いてただけ」

雪奈は疑わしげに一瞥したが、深追いはせず、そのまま歩き続けた。

夕方。

二人は目的もなく街をぶらつき、ふと顔を上げて、ようやく気づ...

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