第85章

雪奈は鏡の前で深く息を吸い、小ぶりのバッグを手に取って階下へ向かった。

時間的に言えば、山本祐翔はもう着いているはずだ。

ホテルのロビーに足を踏み入れた瞬間、休憩エリアで待っていた山本祐翔の姿が目に入る。今日もやけにきちんとした装いで、仕立てのいいブルーのベルベットスーツが、すらりとした体躯をいっそう引き立てていた。

柔らかな雰囲気の男なのに、どこか希少な「育ちの良さ」が滲む。

雪奈を見つけると彼は立ち上がり、隠しきれない驚嘆を瞳に走らせたあと、微笑んで近づいてきた。

「そのジュエリー、君にすごく似合ってる。選んで正解だったな」

笑いながら腕を差し出し、組むよう促す。

雪奈も笑...

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