第97章

雪奈は唇を動かした。けれど、いくら息を吸っても言葉にならない。

ただ、向かいの男の見慣れた眉と目を、呆然と見つめていた。

彫りの深い顔立ち。輪郭は鋭く、まるで神が丹念に仕上げた傑作みたいだ。

その顔が今、十数年前の――まだ幼く、青さの残る少年の面影と、ゆっくり重なっていく。

小林凌輝は目の縁を赤くし、瞬きもせず彼女を見つめたまま、喉の奥から絞り出すように口を開く。

「この数年……俺は人を間違えた。信じる相手も、全部」

「後ろめたさも、甘さも……全部、腹の底で計算してた詐欺師にくれてやってた」

「本当に俺が申し訳なかったのは……命の恩人のほうなのに」

「一生かけて大切にして、償...

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