第100章 隠れる

工藤花恋の咀嚼が、ぴたりと止まった。

――こんな時間に、誰?

箸を置き、玄関へ。ドアスコープを覗く。けれど、そこに人影はない。

警戒したまま、声を張った。

「どちらさまですか」

「工藤さん。俺だ、山川康一だ」

扉の向こうから返ってきたのは、低く、どこか申し訳なさを滲ませた男の声。

工藤花恋は一瞬固まる。反射的に振り返り、ソファで雑誌をめくっている宮崎健を見た。

――深夜、男女二人きり。

しかも片方は衡安グループの社長、もう片方はプロジェクトの責任者。

山川康一に見られでもしたら、たとえただの夜食だったとしても、マスコミや業界の連中が、どんな下世話な筋書きに仕立て上げるか分...

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