第107章 実家に帰る

「俺、薬を届けに来たんだ」

そう言いながら、三浦央士は手にしていた軟膏を工藤花恋へ差し出した。

「知り合いに頼んで特注で作ってもらった。さっき速達で届いたばかりだ。火傷に効くから、使ってみろ」

花恋は内心、わずかに目を見開く。

――この人が、私を気にかけることなんてあるんだ。

けれど、その小さな喜びは一分ももたなかった。

花恋の視線が、するりと下へ落ちる。

央士の左手。力を抜いて垂らした指のあいだに、もう一本。

まったく同じ火傷の軟膏が握られていた。

説明なんて要らない。花恋は一瞬で理解した。

胸の奥に立ったさざ波は、次の瞬間には凍りつき、冷え切った死水へ沈む。

――自...

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