第109章 彼は本当にとても愛している

工藤花恋は、淡々と数語だけ吐き捨てる。まるで空気に向かって言っただけみたいに。そのまま踵を返し、バスルームへ入っていった。

ドアを押し開けた瞬間、ひやりとした冷気が頬を撫でた。

想像していた湯気の白い靄も、鏡に張りつく水滴もない。花恋は反射的にシャワーヘッドの金属レバーへ手を伸ばし、触れた。

――冷たい。骨まで刺さるように。

一瞬、思考が止まる。視線がシャワーブースへ落ちた。

床のタイルには水の跡が残っている。けれど、そこに立ちのぼるはずの温もりは、欠片もない。

……さっき、水を浴びたの?

冬だ。外は身を切る風に冷たい雨。そんな夜に、バスルームで十数分も水シャワーを浴びるなんて...

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