第112章 母の設計

宮崎健が身を張って足止めしてくれた、その一瞬の隙に――工藤花恋は振り返りもせずテラスを出た。

ホールの反対側にある、セミオープンの休憩エリア。

ボックス席へ滑り込むように腰を下ろした花恋は、じん、と疼くこめかみを指で押さえた。

けれど、神様はどうやら彼女を休ませる気がないらしい。

シャンパンを一口も飲めないうちに、目の前へすっと影が落ちた。

花恋がまぶたを持ち上げる。

岡田明菜が、ピンクのラインストーン付きドレスを揺らしながら、しなやかに立っていた。

唇には、見下ろすような笑み。

明菜は花恋の向かいの一人掛けソファに腰を下ろすと、施しでも与えるみたいな口調で言った。

「工藤...

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