第113章 競売

「大丈夫よ、央士さん……」

岡田明菜はそっと下唇を噛み、怯えるように視線の端で工藤花恋を窺った。声は、風が吹けば消えてしまいそうなほど薄い。

「工藤さんがひとりでいらして、寂しそうに見えたので……お話し相手になれたらと思って。たぶん、このネックレスが目立ちすぎて……工藤さん、何か嫌なことを思い出されたのかもしれません。少し、感情的になってしまって……」

三浦央士の表情が、すっと沈む。

次の瞬間、彼は冷たく首を振り向け、その視線を工藤花恋へ突き刺した。

「工藤花恋。言ったはずだ。今夜は大人しくしてろ」

声に温度はない。

目の前にいるのが、正式に迎えた妻ではなく――最初から誰かを傷...

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