第144章 記憶喪失の三浦社長1

妻の死は、彼にとって生涯消えない痛みであり、いちばん向き合いたくない闇でもあった。

その傷口を、南川杏菜は大勢の前で、血が滲むほど生々しく抉り出した。――それは、南川征次郎の頬を思い切り張り飛ばすのと同じだった。

南川征次郎は目を真っ赤にして詰め寄り、手を振り上げる。杏菜の頬へ、今にも平手が落ちそうになる。

杏菜は避けなかった。

ただ意地を張るように背筋を伸ばし、亡き母を思わせるその瞳で、父をまっすぐ射抜く。

そこにあるのは、嘲りと、絶望。

――その一撃は、杏菜の決然とした視線に縫い止められ、宙で止まった。

南川征次郎の指先が震え、やがて力なく腕が下がる。彼は玄関の方を指さし、...

ログインして続きを読む