第162章 今度はもう怖くない

「央士……」

工藤花恋は、彼の腰に回していた腕をゆっくりほどき、半歩だけ後ろへ下がった。わずかに顎を上げる。瞳の奥には、まだ涙が揺れている。

目の前の男は――あの、雲の上みたいに高くて、誰にも膝を折らない三浦グループ社長と、本当に同じ人なのだろうか。

「……ごめんなさい」

花恋は自嘲するように唇の端を曲げた。

「さっき、取り乱した。私が敏感すぎたの」

「大丈夫だ、花恋!」

彼は反射的に、彼女の頬の涙を拭おうとして手を伸ばす。だが途中で、ぴたりと止めた。自分の行動が、また彼女を傷つけてしまうのを恐れるように。

その遠慮が、花恋の胸をいっそう酸っぱく締めつける。

花恋は彼を見つ...

ログインして続きを読む