第165章 苦しい選択

「ううん……違う、あの人じゃない」

工藤花恋が南川杏菜の腕を掴んだ。声は震えて、言葉になりかけては崩れる。

「杏菜……わ、私、薬……やめちゃった」

南川杏菜は耳を疑った。

「……今、なんて言った?」

工藤花恋は両手で顔を覆い、堪えきれないように嗚咽を漏らす。

「この子を……守りたくて。だから、薬を止めたの」

「……正気?」

杏菜の声が跳ね上がり、隣のボックス席の店員がちらりとこちらを見た。杏菜はぐっと息を吸い、胸の奥の震えを押し殺して、痛みに噛みつくような低い声で言い放つ。

「工藤花恋、何考えてるの。自分の体がどういう状態か、分かってるでしょ? 北村先生のところに行ったって...

ログインして続きを読む