第58章 弟の問題

仕事の話になると、二人の呼吸は昔からぴたりと合った。まるで水が流れるように、よどみなく。

最後の訴訟記録を閉じたあと、宮崎健の手が珍しく止まる。

ぬるくなりかけたコーヒーを持ち上げ、ひと口だけ含む。その視線はさりげないふうを装いながら、けれど研ぎ澄まされるほど真っすぐに、工藤花恋の華やかな横顔へと注がれていた。

「昨夜……三浦家では大丈夫だったか」

声音は低く、やわらかい。だが理性だけでは隠しきれない深い気遣いが、そこには滲んでいた。

「つらい思いは、しなかったか」

今の工藤花恋がどれほど厳しい立場にいるか、彼は誰よりよく知っている。

三浦家という、根が絡み合った名門の闇。

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