第60章 親友が帰国する

電話の向こうの水野紗季は、あきらかに一瞬言葉を失った。だが次の瞬間、もともと甘ったるかった声が、わざとらしいほど高く跳ね上がる。

「はぁ? “もうその話はするな”って、どういう意味?」

「工藤花恋って女が、戻るの反対してんじゃないの?」

「やっぱり! あの女、三浦央士に冷たくされてるくせにさ。自分が幸せじゃないからって、他人の幸せが許せないんだよ!」

怒りと嫉妬で尖った声は耳障りで、いつもの“おっとりした紗季”なんて欠片もない。

「村上家に戻って若様になったら、養子先の姉としてあなたの威光に乗れなくなるのが怖いんでしょ?」

「だいたいさ、村上家が裏で口利きしてくれたから、あなた恒...

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