第63章 彼は花粉症だ

バッグからブラックカードを一枚抜き取り、彼女は隣の女の子へ無造作に差し出した。

「行って。店長に言って。いちばん新鮮で、いちばん綺麗に開いてるロットを」

女の子は両手でカードを受け取る。まるで大切な贈り物でも受け取ったみたいに顔を輝かせ、レジへ小走りに駆けていった。

残ったもう一人は、相変わらず忠実に太鼓持ち役を演じ続ける。

わざと声量を上げ、店内中に聞こえるように大げさに感嘆してみせた。

「やだぁ、999本のバラって……どれだけ壮観なの!」

「三浦社長が明菜さんから花の海を贈られたら、感動で死んじゃうんじゃないですか!」

「もう三浦社長、明菜さんのこと好きすぎて抜け出せないで...

ログインして続きを読む