第69章 従兄が帰ってきた

背後で岡田明菜がまだ何かを小声で言っていたけれど、工藤花恋にはもう、耳を傾ける気力なんて欠片もなかった。

「行こ。こんな汚いもん、耳に入れたら穢れる」

南川杏菜も聞こえていたのだろう。思いきり白目をむいて、花恋の手を掴むと、車のほうへ早足で引っ張っていく。

「花恋。待ってくれ!」

背後から、低くて焦りを含んだ男の声。

花恋がドアに手をかけるより早く、その大きな影がふたりの前に立ちはだかった。

三浦央士――。

彼は、氷みたいに冷えた花恋の顔を見つめ、喉を鳴らすように言う。

「さっきは本当にすまなかった。亜衣の代わりに謝る」

「へえ。社長さま直々の謝罪なんて、恐れ多くて震えるわ...

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