第70章 少年時代の思い出

南川杏菜は、まだ魂が抜けきらない顔で振り返った。瞳いっぱいに、信じられないという怯えが浮かんでいる。

「花恋、あんた何してんの? 頭おかしくなった?」

工藤花恋は、こわばった首をうまく回せないまま、隣の親友を見た。

「私の従兄……帰ってきたの」

南川杏菜が勢いよく吐き出しかけた文句は、そのまま喉の奥で引っかかった。

ぱちぱちと素早く瞬きをして、数秒後、呆然とした顔で花恋を見返す。

「……武田昌弘ってこと?」

「留学する前に、あんたに告白してきた従兄の武田昌弘?」

工藤花恋は小さくうなずいた。

本人の口から確かめた途端、南川杏菜は逆にふうっと長く息を吐く。張り詰めていた肩が、...

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