第72章 金を借りる

「君に渡したいものがある。電話じゃ話しづらい。30分後、会社前の喫茶店で会おう。……それと、この件は三浦央士には言わないで」

通話が切れた瞬間、林谷はスマホを握りしめたまま、額に冷や汗がにじむ。

若奥様が、自分と二人きりで?

しかも社長には内緒――?

だが、工藤花恋は見誤っていた。

林谷の三浦央士への忠誠心と、臆病なくらい慎重な性格を。

林谷は迷うことなく社長室の扉を叩いた。

「入れ」

オフィスでは三浦央士が書類の山に埋もれ、顔も上げない。

林谷はおそるおそる近づき、声を震わせた。

「み、三浦社長。さきほど……若奥様からお電話がありまして」

書類をめくる手が、ぴたりと止...

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