第73章 高速追突事故

言い終えるより早く、彼は風みたいにオフィスを飛び出していった。

三浦央士は、その背中――今にもその場でトーマスフレアでも決めそうな勢いの後ろ姿を見送り、呆れたように、でも腹立たしさに思わず笑ってしまった。

明後日の朝。

工藤花恋は小さなキャリーケースを引き、車で出発するつもりでいた。

昨夜も結局ほとんど眠れず、目の下の隈は濃くなるばかり。身体の芯にまとわりつく疲労が、どうしても抜けない。

それでもマンションの前まで来た、その瞬間。

見慣れた人影が、すっと彼女の進路を塞いだ。

「若奥様」

林谷が、いかにも仕事用の微笑を貼り付けたまま、黒いベントレーの横に恭しく立っている。

花...

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