第76章 どうでもいい人間

工藤花恋はスタッフに案内され、廊下の突き当たりにある一番大きなVIPラウンジの扉を押し開けた。

室内では工藤千尋がソファに腰掛け、宝石をこれでもかと身にまとったセレブたちと紅茶を嗜んでいる。

千尋は今年で五十だ。けれど手入れが行き届いているせいか、せいぜい四十代前半にしか見えない。

扉の開く気配に、千尋が顔を上げた。

入ってきたのが工藤花恋だと分かった瞬間、さっきまでセレブ相手に見せていた傲慢さを、彼女は驚くほど素早く引っ込めた。代わりに、やたらと親しげな笑みを貼り付けて立ち上がり、駆け寄ってくる。

「まあ花恋! やっと来たのね!」

千尋は花恋の手をぐいっと掴み、吐き気がするほど...

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