第80章 恩知らず

三浦央士は伏し目がちに、女が自分のスーツの袖口をきつく掴んでいる、白く細い指を見下ろした。

目を危うく細める。だが、振りほどこうとはしない。

むしろ彼女に引かれるまま、長い脚でパーティー会場の外――廊下へと歩を進めた。

非常階段の扉を押し開けた、その直後。

廊下の突き当たりが見えてきたところで――

正面から、ふいに別の人影が現れた。

工藤花恋の足が、がつんと止まる。

そして、さっき立ち去ったばかりの武田昌弘と、真正面からぶつかった。

武田昌弘は足を止め、眉をわずかに持ち上げる。

視線が、絡み合う腕へとゆっくり滑り――三浦央士の顔へ落ち、最後に、青ざめた工藤花恋へ戻った。

...

ログインして続きを読む