第81章 妻に謝罪する

 彼女がようやく三浦央士の傍まで辿り着いた、そのときだった。

 三浦央士がふいに、ほんの少しだけ顔を伏せる。熱を帯びた息が、彼女の耳朶をくすぐった。

「どうした」

 低い声。続けて、わざとらしく囁く。

「……兄貴が帰るの、名残惜しいか?」

 工藤花恋は反射的に振り向いた。「兄貴」という言い方が、妙に意味深で――露骨に、悪意がある。

 彼女は思いきり睨みつけた。

 こいつが突然しゃしゃり出てこなければ、こんなことにはならなかったのに。

 だが三浦央士は、花恋の怒りなど見えていないかのように口元だけを冷たく吊り上げ、踵を返してパーティー会場へ入っていった。

 ホールの中は、流れ...

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