第83章 名門御曹司

工藤花恋は、その場に硬直したまま立ち尽くしていた。

その熱すぎる視線に気づいたのだろう。隣の人間の話を聞いていた工藤洸平が、反射的に顔を上げる。

視線がぶつかった、その瞬間。

洸平の、さっきまでの気だるげな笑みは消え失せ――顔色がさっと青ざめた。

瞳の余裕が、驚きと狼狽に塗り替わる

彼は思わず半歩、後ずさった。足がぴたりと止まる。

「どうした、洸平?」

隣にいた中年の男が問いかける。

広い階段の下。二つの集団が、今にもすれ違おうとしていた。

洸平は歯を食いしばり、花恋と、その隣に立つ三浦央士のあいだへ視線を行き来させる。垂れた両手が、瞬く間に拳へと変わった。

姉ちゃん――...

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