第85章 再び彼女を置き去りにする

「さっき自分で言ったこと、もう忘れたの? 今のあんたは村上家の御曹司、村上グループの未来の跡継ぎよ。工藤千尋ごときに、何をビビってんの」

「今夜あの女があんな大げさなことやってるのだって、結局は権力者に取り入れたいだけ。信じる? 村上家の御曹司って看板を背負って入っていけば、工藤千尋は腹の底でどれだけ憎んでても、笑顔貼りつけて媚びてくるわよ」

工藤洸平は工藤花恋の言葉を聞きながら、強張っていた身体の力が少しずつ抜けていくのを感じた。

花恋は、彼の顔に冷静さが戻っていくのを確かめると、ふっと口調を変え、どこか愉しげに言った。

「それに……武田昌弘も戻ってきたわ」

工藤洸平が勢いよく顔...

ログインして続きを読む