第96章 温泉で喧嘩

山川康一のことは、正直言ってあまり好きになれない。

けれど――山川悦子という、守られて育ったせいで少し世間知らずで、それでもちゃんと「ありがとう」を言える女の子のことは。工藤花恋は心の底から気に入っていた。

翌朝。

大型バスがプロジェクトチーム一行を乗せ、ぞろぞろと南山温泉リゾートへ到着した。

降りた瞬間、目の前に広がったのは山一面の紅葉。そこへ、山の中腹にたなびく白い霧がふわりと重なって、寒気まで薄めていく。リゾートの設えもまた、贅沢さと自然美の調和をこれ以上ないほど極めていた。

花恋はロビーの一角に置かれた、蘇州刺繍の屏風へと視線を滑らせる。値段の桁が想像できない代物だ。――な...

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