第5章

成田空港のVIP通路は、一瞬にして混乱の渦に叩き込まれた。

「どいてください! 急患です!」

医療スタッフがストレッチャーを押しながら、人混みをかき分けて疾走する。

千尋はストレッチャーに横たわり、顔色は紙のように真っ白だった。酸素マスクが顔を覆い、様々なモニターがけたたましいアラーム音を鳴らしている。

「藤原千尋だ! 藤原千尋よ!」

「黒木社長、マジで結婚式を放り出して高嶺の花を助けに来たんだ!」

記者たちが狂ったように押し寄せ、フラッシュの豪雨が瞬く。望遠レンズがストレッチャーの上で弱々しく横たわる少女に一斉に向けられた。

雅人は片手で千尋の手を固く握り、もう片方...

ログインして続きを読む