第142章 彼の探す人を引き寄せる

西園寺百合子は、ハッと我に返ったように声を上げた。

「どこへ行くつもり?」

西園寺京夜は椅子の背にかけてあったスーツの上着を手に取り、緩慢な動作で袖を通しながら答える。

「会社だ。欧州市場の開拓が必要なのでね。俺が直接行く」

「欧州?」

西園寺百合子は眉をひそめた。

「こんな時に欧州へ行って何をするの? 会社はあなたなしじゃ回らないとでも言うつもり?」

「ああ、回らないだろうな」

西園寺京夜は彼女を見据えた。その瞳は凪いだ湖面のように静まり返っている。

「西園寺グループは俺がこの手で築き上げたものだ。何事にも揺らがせはしない。どこの馬の骨とも知れぬ子供ごときにはな」

彼は...

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