第177章 朝飯前

葉山立夏はタッチパッドを指先で滑らせ、三つのファイルを画面上に並べた。

警察に通報もせず、社内でも騒ぎ立てていない。

確たる証拠が出る前に動けば、ただ「藪蛇」になるだけだと知っているからだ。

病室のドアが、音もなく開いた。

葉山立夏は看護師だと思い、顔も上げずに言った。

「結構よ、大丈夫だから」

足音が、ベッドの脇で止まる。

馴染みのある、冷ややかなウッディ系の香りが漂ってきた。

葉山立夏の手が止まり、ゆっくりと顔を上げる。

そこに、西園寺京夜が立っていた。

黒いトレンチコートを纏い、襟元には外の冷気を帯びている。その端正な眉目には、隠しきれない疲労と、恐怖の余韻が滲んで...

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