第189章 童話の場面

額の隅に残る、あの事故の傷跡。

その一筋の痕が、針のように西園寺京夜の網膜を刺した。

「痛むか?」

彼はようやく口を開いた。その声は酷く掠れていた。

葉山立夏は窓外に向けていた視線を戻し、彼へと落とす。

「もう瘡蓋(かさぶた)になっているわ」

西園寺京夜の喉仏が動く。何か言おうとして、けれどどんな言葉も、この瞬間には空虚に響くだけだと悟った。

彼は、彼女のために万全の策を講じたつもりだった。彼女の前に立ちはだかる障害を、すべて自分が掃討してやろうと。

だが、彼女は彼の「処理」など必要としていなかった。

彼女自身が、最終的な裁決者だったのだ。

車内の沈黙を破ったのは、携帯電...

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